サーマージ(Thermage)は、単極性高周波(Monopolar Radiofrequency, RF)エネルギーを利用して皮膚の真皮層と皮下脂肪層に熱エネルギーを伝達し、コラーゲンを再構築(Remodeling)させ、新規コラーゲン(Neocollagenesis)の生成を誘導する非侵襲的な肌のタイトニング治療です。2002年のFDA承認以降、技術は継続的に発展し、現在ではThermage FLX(Fourth Generation)が最新バージョンとして使用されています。特に、B.A.クリニックで実施されるプレヒーティング(Pre-Heating)技法と組み合わせたサーマージFLXは、従来のバージョンと比較して治療効率と患者様の利便性が大幅に向上しています。本記事では、サーマージFLXの物理的な作用機序から臨床効果、そして類似のエネルギーベース機器との科学的な比較まで、論文の根拠に基づいて解説します。
1. 肌のハリ低下の主な原因 — なぜコラーゲンが重要なのか
肌のハリは、主に真皮層を構成するコラーゲン(Collagen)とエラスチン(Elastin)繊維によって決定されます。コラーゲンは肌の乾燥重量の約75〜80%を占め、その中でもType Iコラーゲンが肌のハリと構造的なサポートにおいて中心的な役割を担っています。
加齢が進むと、以下のような変化が複合的に作用します:
- 線維芽細胞(Fibroblast)の機能低下によるコラーゲン合成の減少
- マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP, Matrix Metalloproteinase)の活性化による既存コラーゲンの分解促進
- コラーゲン線維間の架橋結合(Cross-linking)異常による構造的な柔軟性の低下
- 皮下脂肪層の再分布と容積減少による肌のたるみの悪化
紫外線(UV)への曝露はこれらのプロセスを加速させ、特にUVAは真皮層の深部まで浸透し、コラーゲンの分解を促進します。サーマージFLXは、このように低下したコラーゲン構造を熱エネルギーで再活性化するという点で、根本的な肌のハリ改善手段となります。
2. サーマージFLXの作動原理 — 単極性高周波の物理的機序
サーマージFLXは、6.78MHzの単極性高周波(Monopolar RF)エネルギーを肌に伝達します。双極性(Bipolar)または多極性(Multipolar)システムとは異なり、単極性方式はエネルギーが皮膚表面から反対側の電極(接地パッド)に向かって深層まで均一に透過するのが特徴です。
熱発生機序:
高周波電流が皮膚組織内のイオン(Na⁺, K⁺, Cl⁻)を振動させると、組織の電気抵抗(Impedance)によって熱が発生します(ジュール熱、Joule Heating)。この時に発生する熱は、真皮の深層(2〜3mm)と皮下脂肪層(4〜6mm)に集中し、表皮は冷却(Cryogen Cooling)システムによって継続的に保護されます。
コラーゲン反応の2段階:
- 即時反応(Immediate Effect): コラーゲンの三重らせん構造(Triple Helix)は、約60〜70°Cで収縮(Thermal Denaturation)が起こります。施術直後に一部の患者様が肌がすぐに引き締まったと感じるのは、この収縮反応によるものです。
- 長期反応(Long-term Effect): 熱による組織損傷が治癒反応(Wound Healing Response)を誘発し、この過程で線維芽細胞(Fibroblast)が活性化され、新しいコラーゲンが合成されます。この新規コラーゲン形成は、施術後2〜6ヶ月にわたって進行し、効果のピークは施術後6ヶ月前後に出現することが多いです。
3. プレヒーティング(Pre-Heating)技法の臨床的意味
B.A.クリニックで適用されるプレヒーティングサーマージFLXは、単にエネルギーを伝達するだけでなく、施術前に皮膚組織を十分に加熱(Pre-Heat)してから本治療エネルギーを伝達する方法です。
プレヒーティングの科学的根拠:
- 組織温度が事前に十分に上昇すると、その後の治療エネルギーが目的の深さでより均一に作用します。
- コラーゲン収縮反応の閾値温度(60〜70°C)に、より安定して到達できるため、治療効率が向上します。
- 組織の抵抗値(Impedance)が低下することで、エネルギー透過深度が最適化されます。
2022年にJournal of Cosmetic and Laser Therapyに発表された研究では、プレヒーティングプロトコルを適用したサーマージ施術群で、標準プロトコルと比較して肌のハリ改善スコアが有意に高く、患者の疼痛スコアは同等またはそれ以下で測定されました。
4. 臨床効果 — 論文根拠
サーマージの臨床効果は、多数の査読付き研究によって検証されています。
Fitzpatrickら(2003)による単回施術の臨床研究では、顔・首・目元にサーマージを施術した患者の83%で、6ヶ月時点での肌のハリとシワの改善が観察されました。この研究は、その後サーマージの臨床的根拠の基盤資料として広く引用されています。
Doverら(2007)の研究では、目元(まぶた周辺)のサーマージ単回施術後12ヶ月の追跡で、患者の86%が持続的な効果改善を報告し、組織学的検査で真皮内の新規コラーゲン線維の増加が確認されました。
最近の第4世代FLXバージョンに関する研究では、AccuREP™技術(治療中の皮膚インピーダンス変化をリアルタイムで測定し、エネルギーを自動調整)が適用されたことにより、以前の世代と比較して治療の再現性と患者様の利便性が向上したことが報告されています。
効果持続期間:
単回施術基準で、コラーゲン新生効果は最大1〜2年持続すると報告されており、個人の老化速度・生活習慣・紫外線対策の有無によって差があります。定期的な再施術(1年に1〜2回)により、長期的なハリの維持が可能です。
5. サーマージFLX vs ウルセラ(HIFU) vs インモード(Bipolar RF) — エネルギー機序比較
B.A.クリニックでは、サーマージFLXの他に、ウルセラゴールド(Ultherapy)、インモードリフティング(Inmode)など、様々なエネルギーベースのリフティング機器を取り揃えています。各機器のエネルギー機序と適した対象が異なるため、理解が重要です。
サーマージFLX (単極性高周波, Monopolar RF):
- エネルギータイプ: 6.78MHz高周波電流
- 作用深度: 真皮全層位 + 皮下脂肪層上部 (2〜6mm)
- 特徴: 広範囲のボリューム加熱により、全体的な肌のハリ改善に強み。肌のたるみ初期〜中期に効果的
- 適応対象: 肌のハリ低下、眉間・目元・首・腹部のたるみ
ウルセラ (集束超音波, HIFU):
- エネルギータイプ: 高強度集束超音波(HIFU)
- 作用深度: SMAS層(筋膜層、4.5mm深度)まで精密伝達
- 特徴: 肌の筋膜層(SMAS)に直接エネルギーを伝達し、構造的なリフティングに強み。肌のたるみが顕著な場合に適している
- 適応対象: たるんだ頬・目元・顎のライン、SMAS層の弛緩
インモードリフティング (双極性高周波, Bipolar RF):
- エネルギータイプ: 双極性高周波 + サブダーマルレーザー(460nm)
- 作用深度: 皮下脂肪層浸透型ニードルで2〜8mm精密調整可能
- 特徴: 皮下脂肪層の選択的加熱と再構築。脂肪改善 + ハリの同時改善
- 適応対象: 二重顎、顎下の脂肪、腹部の脂肪層のたるみ
これら3つの機器は競合関係ではなく、相互補完的に使用できます。肌のたるみの層位と重症度に応じて、単独または複合治療戦略を立てることが、最適な結果を得る方法です。
6. 施術対象と注意事項
サーマージFLXの適応対象:
- 30〜60代前半の初期〜中期の肌のハリ低下
- 目元・額・頬・顎のライン・首のたるみが始まった場合
- レーザー色素治療との併用可能 (当日または一定間隔後)
- 回復期間なしで日常生活への復帰を希望する場合
注意事項:
- 金属インプラント(ペースメーカー、金属インプラントなど)がある場合は施術不可
- 妊娠中の施術禁止
- 皮膚感染・開放性創傷部位への直接施術不可
- 過度な肌のたるみ(手術的矯正が必要なレベル)の場合、期待効果は限定的
- 施術後、一時的な発赤・腫れが生じることがありますが、ほとんどの場合数時間〜1日以内に消失します
7. サーマージFLXを検討する前のチェックリスト
サーマージFLXは、「すぐに劇的な変化」よりも「肌構造自体の質的改善」を目標とする治療です。以下のような場合に、サーマージFLXは特に効果的です:
- まだ手術的矯正が必要ではないが、ハリ低下を自覚している場合
- フィラー・ボトックス施術と併用し、肌の質感まで一緒に改善したい場合
- 回復期間なしで日常生活の維持が重要な場合
- 長期的・持続的な肌の健康管理を希望する場合
一方、すでに肌のたるみがひどく、手術(フェイスリフト)が推奨されるレベルであれば、エネルギーベース施術の効果は限定的になる可能性があります。専門医の診断を通じて、現在の肌の状態と目標に合った治療を選択することが最も重要です。
8. B.A.クリニックでのサーマージFLX治療
B.A.クリニックでは、プレヒーティングサーマージFLXを通じて、皮膚組織のエネルギー吸収効率を最適化したオーダーメイドプロトコルを適用しています。
- 施術前の皮膚の厚さ・ハリ状態の分析に基づく個人別エネルギー設定
- AccuREP™技術ベースのリアルタイムインピーダンスモニタリングによる安全で均一なエネルギー伝達
- ウルセラゴールド、インモードリフティングなど、他のエネルギー機器との複合治療計画の立案可能
- フィラー・ボトックスなどのプチ施術との統合的なアンチエイジングプランの提案
肌のハリ低下に悩みが始まった方、またはリフティング施術の種類と適性についてご興味のある方は、B.A.クリニックの専門医にご相談ください。





