スレッドリフトとは — 皮膚内部で作用する「構造的サポート」施術の原理
スレッドリフト(Thread Lifting)は、医療用吸収糸(absorbable suture)を皮下組織に挿入し、たるんだ組織を物理的に引き上げると同時に、挿入された糸の周囲にコラーゲン新生(neocollagenesis)を誘導する非手術的リフティング施術です。
手術による顔面リフト(facelift)とは異なり、切開なしでカニューレや針を通して糸を挿入し、施術時間が30〜60分と短く、回復期間が早いのが特徴です。ただし、スレッドリフトの効果と持続期間は、使用する糸の素材・形状・挿入技術によって大きく異なるため、これら3つの要素を総合的に理解することが重要です。

糸の素材別特性 — PDO、PCL、PLLAはどう違うのか
現在スレッドリフトに使用される吸収糸は、大きく3つの素材に分類されます。各素材は体内での吸収速度、コラーゲン刺激の程度、組織反応パターンが異なり、施術目的と患者様の状態によって選択が変わります。
1. PDO(ポリジオキサノン)
PDOは最も長く使用されているリフティング糸の素材で、心血管手術で縫合糸として使用されていた材質です。体内に挿入後、約6〜8ヶ月かけて加水分解されて吸収され、吸収過程で周囲組織に軽微な炎症反応を引き起こし、I型・III型コラーゲンの合成を促進します。比較的柔らかく柔軟な物性のため、微細なシワ改善や肌のハリ・弾力向上に多く活用されます。
2. PCL(ポリカプロラクトン)
PCLはPDOよりも体内残存期間が著しく長い素材です。約24〜36ヶ月かけて徐々に分解され、この期間中、持続的なコラーゲン刺激効果を示します。分子量が大きく、結晶性(crystallinity)が低いため、柔軟でありながら引張強度が高いのが特徴です。長期的なリフティング効果が期待できますが、素材が長く残る分、施術者の解剖学的判断がより重要になります。
3. PLLA(ポリ-L-乳酸)
PLLAは、スカルプトラ(Sculptra)の主成分としてもよく知られている生体刺激型素材です。体内で約12〜18ヶ月かけて吸収されながら、強力なコラーゲン刺激反応を誘導します。PDOに比べて組織反応がやや強く現れ、これによりコラーゲン密度がさらに高まる効果が期待できます。ただし、過度な組織反応による結節(nodule)形成の可能性があるため、適切な挿入深度と間隔の調整が必須です。


糸の形状による分類 — モノスレッド、コグスレッド、スクリュースレッド
素材とともに、糸の形状(geometry)も施術効果を決定する重要な変数です。
モノスレッド(Mono Thread):突起がなく滑らかな単一の糸の形状で、皮膚の真皮層に挿入してコラーゲン生成を誘導します。直接的なリフティング効果よりも、肌のハリとキメの改善に焦点を当てた施術です。
コグスレッド(Cog Thread):糸の表面に鋸歯状の突起(barbまたはcog)が形成されており、挿入時に周囲組織を物理的に引き上げる力を発揮します。方向性(unidirectionalまたはbidirectional)によって挙上力と固定力が異なり、頬・顎のライン・二重顎など、重力によるたるみが顕著な部位に使用されます。
スクリュースレッド(Screw Thread):1本または2本の糸が螺旋状にねじれた形状で、挿入部位にボリューム感を与えながらコラーゲン生成を促進します。頬のくぼみが気になる部位や口元周辺のハリ補給に活用されます。

ミジュコ(Miracu)リフティングの差別点 — なぜ注目されるのか

ミジュコ(Miracu)はPDO素材のコグスレッドをベースとしたリフティングシステムで、従来のPDOコグスレッドと比較していくつかの構造的な差別点があります。
360度放射状コグ配列
一般的なコグスレッドが一方方向(uni-)または両方向(bi-directional)に突起が配列されるのに対し、ミジュコは糸の全周にわたってコグが放射状に配置されています。これにより、組織との接触面積が広がり、挙上力が全方位に分散されるため、より安定したリフティング効果が期待できます。
モールディング(molding)方式によるコグ形成
従来のコグスレッドは、ほとんどが糸の表面をナイフで切削(cutting)して突起を作る方式でしたが、ミジュコは熱成形(molding)技術でコグを形成します。切削方式では糸の直径が細くなり引張強度が低下する可能性がありますが、モールディング方式は糸の元の直径を維持するため、破断強度(breaking strength)が高いです。
組織固定力とコラーゲン刺激の二重効果
ミジュコのコグ構造は、挿入直後に物理的な挙上効果を提供する一方で、PDO特有の加水分解過程で発生する炎症反応を通じてコラーゲン新生を誘導します。つまり、即時的なリフティング効果と漸進的なハリ改善効果が時間差を置いて複合的に現れます。


スレッドリフトが適している部位と対象
スレッドリフトは、中程度の皮膚のたるみがあり、手術によるリフトアップまでは望まない患者様に適しています。特に以下の部位で高い満足度を示します。
- 頬・中顔面部:重力によって下にたるんだ頬の肉をコグスレッドで引き上げ、Vラインを改善します。
- 顎のライン・二重顎:顎下部のたるんだ組織を引き上げ、顎のラインをすっきりと整えます。
- 眉・額:モノスレッドまたはコグスレッドを活用し、眉のたるみと額のシワを同時に改善します。
- 首のシワ:首の皮膚の横ジワや縦バンドをモノスレッドで改善できます。
ただし、皮膚のたるみが重度の場合(Grade III〜IV)には、スレッドリフト単独の施術よりも、シュリンクユニバースやインモードリフティングなどのエネルギーベースのリフティング施術との複合プロトコルがより効果的である場合があります。したがって、施術前の精密な皮膚状態評価と個別カスタマイズされた治療計画の策定が必須です。

施術後のケアと注意事項

スレッドリフト後1〜2週間は、施術部位に引きつり感、軽度の腫れ、あざが現れることがありますが、これは糸が組織に定着する過程で発生する正常な反応です。施術後約2〜4週間は、過度な表情の変化、強いマッサージ、高温サウナを避けることが推奨されます。糸が組織内で安定的に定着し、周囲のコラーゲンが形成されるまでに約4〜8週間かかるため、最終的な結果は施術後1〜2ヶ月後に評価するのが望ましいです。
スレッドリフトの効果を決定する核心 — 施術者の解剖学的判断
スレッドリフトの結果は、糸の素材やブランドよりも、施術者が顔の解剖学的構造をどれだけ正確に把握しているかによって左右されます。顔面部には顔面神経(facial nerve)の枝、耳下腺管(parotid duct)、浅側頭動脈(superficial temporal artery)など敏感な構造物が分布しており、糸の挿入方向・深さ・固定点が不適切である場合、非対称、引きつり、皮膚の陥没、糸の突出などの副作用が発生する可能性があります。
したがって、スレッドリフトは単に「糸を入れる施術」ではなく、患者様の骨格構造、脂肪分布、皮膚の厚さ、老化パターンを総合的に分析した後、最適なベクトル(vector)とアンカーポイント(anchor point)を設計する構造的リフティング戦略です。
BAクリニック 相談案内
BAクリニックでは、スレッドリフト・ミジュコ施術前に患者様の顔の構造と老化の程度を精密に分析し、糸の素材・形状・挿入経路を個別にカスタマイズして設計します。シュリンクユニバース、インモードリフティングなどのエネルギーベースの施術との複合プロトコルも併せてご相談いただけますので、たるみや弾力低下でお悩みでしたら、お気軽にお問い合わせください。







